CHAPTER 01

Step 2 — 需要を確かめる

仮説に需要があるかを検証する。ヒアリング・競合分析・Go/No Go判定。

Step 2: 需要を確かめる

Step 1で書いた仮説は、まだ「自分の頭の中で筋が通っている話」でしかない。売上に変わる仮説かどうかは、外の世界にぶつけて初めてわかる。需要検証の目的は、褒めてもらうことではない。買う理由・買わない理由・今すでに使っている代替手段を集め、商品開発に進むか撤退するかを決めること。

この章のゴールは「Go / No Go を数字で言える状態」になること。検索、SNS、ヒアリング、競合分析の4つを使って、仮説を冷静に削る。


目次

  • [[#1. 需要シグナルの3階層 — 検索 / SNS痛点 / 直接ヒアリング|需要シグナルの3階層 — 検索 / SNS痛点 / 直接ヒアリング]]
  • [[#2. 検索ボリューム調査 — キーワードプランナー・Ahrefs・Google Trends|検索ボリューム調査 — キーワードプランナー・Ahrefs・Google Trends]]
  • [[#3. SNS痛点抽出 — X検索・Reddit・知恵袋からの不満収集|SNS痛点抽出 — X検索・Reddit・知恵袋からの不満収集]]
  • [[#4. ヒアリング設計 — 3〜5人を選ぶ基準と質問設計|ヒアリング設計 — 3〜5人を選ぶ基準と質問設計]]
  • [[#5. ヒアリング技法 — 誘導しない問い方 / 沈黙の使い方|ヒアリング技法 — 誘導しない問い方 / 沈黙の使い方]]
  • [[#6. 競合10〜20の比較分析 — 機能 / 価格 / レビュー / 弱点|競合10〜20の比較分析 — 機能 / 価格 / レビュー / 弱点]]
  • [[#7. Go/No Go 判定基準 — 何が見えたら進む・撤退するか|Go/No Go 判定基準 — 何が見えたら進む・撤退するか]]
  • [[#8. 軸X・軸Yそれぞれへの適用|軸X・軸Yそれぞれへの適用]]
  • [[#9. 演習 — 今週ヒアリング3人を取りに行く計画|演習 — 今週ヒアリング3人を取りに行く計画]]

1. 需要シグナルの3階層 — 検索 / SNS痛点 / 直接ヒアリング

概念

需要シグナルは3階層で見る。1つだけ見ると誤判定する。

| 階層 | 見るもの | 強み | 弱み | |---|---|---|---| | 検索 | Google Trends / キーワード調査 | 既に探されている課題が見える | 検索されない潜在課題は見えない | | SNS痛点 | X / Reddit / 知恵袋 / レビュー | 生々しい不満の言葉が取れる | 声の大きい人に偏る | | 直接ヒアリング | 3〜5人の会話 | 支払い意欲・背景・代替手段まで聞ける | 質問が下手だと誘導になる |

需要検証で見るべきなのは「好きですか?」ではなく、過去の行動Rob Fitzpatrick『The Mom Test』の中核は「自分のアイデアではなく相手の生活を聞く」「未来の約束ではなく過去の具体行動を聞く」ことにある。

なぜ重要か

人は優しい。目の前で「このサービスどう思いますか?」と聞かれたら、たいてい「良さそうですね」と言う。だが、それは需要ではない。需要とは、すでに検索している、愚痴っている、代替手段に時間やお金を払っている、という行動に出ているもの。

今日できる1アクション

Step 1の仮説シートから、顧客が使いそうな検索語を10個、SNSで愚痴りそうな表現を10個、ヒアリングしたい実名候補を5人書く。


2. 検索ボリューム調査 — キーワードプランナー・Ahrefs・Google Trends

概念

検索調査は「その課題が言語化されているか」を見る作業。Google Trendsは複数キーワードの相対的な検索関心を比較できる。Google公式ヘルプでは、複数の検索語グループを比較できる機能が説明されている。

手順

  • 顧客語で10語出す

事業者目線の言葉ではなく、顧客がスマホで打つ言葉にする。例: 「AI導入 コンサル」より「ChatGPT 会社 使い方」「議事録 自動化」。

  • Google Trendsで比較する

似た言葉を並べ、地域と期間を変えて見る。急上昇だけでなく、安定して検索されているかを見る。

  • 検索結果の1ページ目を読む

上位に広告、比較記事、個人ブログ、公式サービス、知恵袋があるかを分類する。広告が多いなら支払い意欲の兆候。知恵袋やフォーラムが多いなら未解決の悩みの兆候。

  • キーワードを3分類する

課題語、解決語、購買語に分ける。

| 種類 | 例 | 意味 | |---|---|---| | 課題語 | 「社内ナレッジ 探せない」 | 痛みがある | | 解決語 | 「RAG 導入」「AI FAQ」 | 解決策を探している | | 購買語 | 「AI コンサル 費用」「Notion AI 料金」 | 支払い検討に近い |

判定

  • 課題語だけ強い → まだ啓蒙が必要。コンテンツから入る。
  • 解決語が強い → 商品化候補。比較・導入支援が刺さる。
  • 購買語が強い → 営業・LP・価格表まで作る価値がある。

よくある失敗

  • 自分が使う専門語だけで調べる
  • 月間検索数だけ見て、検索意図を読まない
  • 急上昇ワードを需要と勘違いする

3. SNS痛点抽出 — X検索・Reddit・知恵袋からの不満収集

概念

SNSは「検索するほど整理されていないが、感情として漏れている痛み」を拾う場所。X、Reddit、知恵袋、アプリレビュー、Amazonレビュー、noteコメントを横断して、同じ不満が繰り返されているかを見る。

手順

  • 検索語に「困った」「めんどい」「できない」「高い」「やめた」「代替」を足す。
  • 30件だけ読む。深掘りしすぎない。
  • 不満を原文のままメモする。自分の言葉に翻訳しない。
  • 不満を3カテゴリに分類する。

| カテゴリ | 例 | 商品化の示唆 | |---|---|---| | 時間の痛み | 毎回探すのが面倒 | 自動化・検索・テンプレ | | お金の痛み | 高すぎて続かない | 低価格版・成果報酬 | | 不安の痛み | 失敗したら怖い | 伴走・保証・事例 |

なぜ原文を残すか

売れるコピーは顧客の口から出る。営業資料やLPで使う言葉は、こちらが作るのではなく、痛点メモから拾う。特に地方中小企業向けは、専門語より「現場で言っている言葉」が強い。


4. ヒアリング設計 — 3〜5人を選ぶ基準と質問設計

選ぶ基準

最初のヒアリングは人数を増やしすぎない。3〜5人でよい。ただし、選び方が大事。

  • 仮説のターゲットに近い人
  • 直近30日以内にその課題を経験した人
  • いま何らかの代替手段を使っている人
  • 本音で話してくれる距離感の人

質問設計

聞くべきは「買いますか?」ではない。以下の順で聞く。

  • 最後にその問題が起きたのはいつですか?
  • その時、具体的に何をしましたか?
  • どれくらい時間・お金・精神的負荷がかかりましたか?
  • 今は何で代替していますか?
  • その代替手段の何が不満ですか?
  • 過去にお金を払って解決しようとしたことはありますか?
  • もし今後も放置したら何が困りますか?

最後にだけ、自分の仮説を短く見せる。先に見せると、相手はあなたを喜ばせる回答を始める。


5. ヒアリング技法 — 誘導しない問い方 / 沈黙の使い方

誘導しない問い方

NG質問:

  • 「このサービス、便利だと思いませんか?」
  • 「月5,000円なら払えますか?」
  • 「AIで解決できたら嬉しいですよね?」

OK質問:

  • 「今はどう処理していますか?」
  • 「最後にその作業をした時、何分かかりましたか?」
  • 「過去に似たものへ払った金額はいくらですか?」

沈黙の使い方

相手が考え込んだ時に、すぐ助け舟を出さない。3秒待つ。すると「本当はね」と出てくることがある。ヒアリングで価値があるのは、整理された回答ではなく、迷いながら出てくる本音。

記録フォーマット

` ヒアリング日: 相手: ターゲット一致度: 高 / 中 / 低

直近の具体エピソード: 現在の代替手段: 時間コスト: 金銭コスト: 不満の原文: 支払い経験: 温度感: 高 / 中 / 低 次アクション: `


6. 競合10〜20の比較分析 — 機能 / 価格 / レビュー / 弱点

概念

競合がいることは悪いことではない。競合がいるなら、誰かがすでにお金を払っている可能性がある。見るべきは「競合がいるか」ではなく、競合が満たしていない弱点があるか

比較表

| 項目 | 見ること | |---|---| | ターゲット | 誰向けに売っているか | | 価格 | 初期費用 / 月額 / 成果報酬 | | 主機能 | 何を解決しているか | | 導入障壁 | 難しい設定・初期作業はあるか | | レビュー | 高評価理由 / 低評価理由 | | 弱点 | 高い・遅い・難しい・サポートが薄い | | 自分の勝ち筋 | 速さ・伴走・地域性・AI活用・低固定費 |

10社で傾向が見え、20社で穴が見える。最初から50社見ない。疲れて判断が鈍る。


7. Go/No Go 判定基準 — 何が見えたら進む・撤退するか

判定基準

検証前に基準を決める。検証後に決めると、都合よく解釈してしまう。

| 判定 | 条件 | |---|---| | Go | 3〜5人中2人以上が強い痛みを語り、代替手段に時間かお金を払っている | | 修正Go | 痛みはあるが、ターゲット・価格・提供形態のどれかがズレている | | No Go | 褒め言葉はあるが、過去行動・支払い・代替手段が出ない |

数値例

  • ヒアリング5人中、3人が直近30日以内の具体エピソードを語る
  • 5人中、2人が既存代替に月額または単発で支払い済み
  • 競合10社中、低評価レビューで同じ不満が5件以上出る
  • 提案前の仮予約、紹介、次回面談などの具体コミットが2件以上出る

8. 軸X・軸Yそれぞれへの適用

軸X(個人ブランド / AI導入支援)

軸Xでは、需要検証の中心はヒアリングと既存人脈。検索やSNSは補助。地方中小企業は「検索して比較」より「紹介された人に相談」する比率が高い。したがって、以下を見る。

  • 経営者が直近で困っている業務
  • すでに外注・顧問・SaaSに払っている金額
  • AIに対する期待ではなく不安
  • 「誰なら任せられるか」の信頼条件

軸Y(プロダクト)

軸Yでは、競合レビューとSNS痛点の比率を上げる。個人課金は単価が低いので、1人ずつの営業だけでは伸びない。繰り返し出ている不満を拾い、LPやMVPで検証する。

  • 既存サービスの低評価レビュー
  • 解約理由
  • 月額課金への抵抗
  • 法務・ストア審査・決済審査の制約

9. 演習 — 今週ヒアリング3人を取りに行く計画

出力物

今週中に以下を作る。

` 仮説名: 検証期限:

検索語10個: SNS痛点メモ30件: 競合10社:

ヒアリング候補5人:

  • 名前 / 連絡経路 / なぜ対象か

2. 3. 4. 5.

Go/No Go基準: `

完了条件

  • 3人に連絡済み
  • 1人以上の日程が確定
  • 競合10社の比較表が埋まっている
  • Go / No Go基準が検証前に書かれている

参考資料

  • [Google Trends Help — Compare Trends search terms](https://support.google.com/trends/answer/4359550?hl=en) — 複数検索語の比較方法
  • [Google Trends](https://trends.google.com/trends/) — 検索関心の確認
  • [The Mom Test 公式サイト](https://www.momtestbook.com/) — 顧客ヒアリングの基本書
  • [Rob Fitzpatrick『The Mom Test』要約記事](https://www.sachinrekhi.com/p/the-mom-test-rob-fitzpatrick) — 過去の具体行動を聞く原則の解説

学習目標

  • 需要シグナルを3階層で集められる
  • 誘導しないヒアリング質問を10個書ける
  • 競合比較表を1枚作れる

成功基準

  • 自分の仮説に対して「Go/No Go」を数字で言える状態になる
  • ヒアリング3人分の議事録が arscontexta/inbox/ に残る