Step 5: 売る
リストと商品があっても、売る工程が雑だと売上にならない。営業は押し売りではない。顧客の課題を一緒に定義し、解決策を選び、リスクを潰し、決断できる状態を作る仕事である。
この章のゴールは、初回ヒアリングから提案、価格交渉、クロージング、失注分析までを型で回せる状態になること。属人的な気合いではなく、毎回同じ品質で商談を進める。
目次
- [[05-selling-presentation-basics|プレゼンテーションの基礎(2026年最新) — 5本柱]] ✅ 本文完成(v1.0)
- [[#1. 売るとは何か — 押し売り / 課題解決 / 共同創造 の3スタンス|売るとは何か — 押し売り / 課題解決 / 共同創造 の3スタンス]]
- [[#2. 提案の型 — 課題定義 → 解決案 → 効果 → 価格 → リスク|提案の型 — 課題定義 → 解決案 → 効果 → 価格 → リスク]]
- [[#3. 価格交渉 — 値引き要求への返し方 / アンカリング|価格交渉 — 値引き要求への返し方 / アンカリング]]
- [[#4. 商談の流れ — 初回ヒアリング / 提案 / クロージング|商談の流れ — 初回ヒアリング / 提案 / クロージング]]
- [[#5. クロージング技法 — 沈黙 / 仮クロージング / 期限設計|クロージング技法 — 沈黙 / 仮クロージング / 期限設計]]
- [[#6. 契約書・利用規約の運用 — 雛形 + 個別カスタマイズ|契約書・利用規約の運用 — 雛形 + 個別カスタマイズ]]
- [[#7. 紹介報酬と成約サイクル — リファラル設計|紹介報酬と成約サイクル — リファラル設計]]
- [[#8. 失注分析 — なぜ売れなかったかを言語化する|失注分析 — なぜ売れなかったかを言語化する]]
- [[#9. 軸X(コンサル) / 軸Y(課金) それぞれへの適用|軸X(コンサル) / 軸Y(課金) それぞれへの適用]]
- [[#10. 演習 — 1件の提案ロールプレイをジョブズ相手にやる|演習 — 1件の提案ロールプレイをジョブズ相手にやる]]
1. 売るとは何か — 押し売り / 課題解決 / 共同創造 の3スタンス
営業には3つのスタンスがある。
| スタンス | 何をしているか | 結果 | |---|---|---| | 押し売り | 自分の商品を買わせる | 短期的に売れても信頼を失う | | 課題解決 | 顧客の困りごとに合う解決策を出す | 標準的な営業 | | 共同創造 | 顧客と一緒に解くべき課題を設計する | 高単価・継続につながる |
信二さんが目指すべきは共同創造。特にAI導入支援は、顧客自身も何に困っているか整理できていないことが多い。売る前に、課題を言語化する価値がある。
2. 提案の型 — 課題定義 → 解決案 → 効果 → 価格 → リスク
提案書はこの順で作る。
- 課題定義
顧客の現実を、顧客の言葉で書く。
- 解決案
何をするか。機能ではなく、業務がどう変わるかで書く。
- 効果
時間削減、ミス削減、売上増、教育コスト削減など。
- 価格
何に対していくら払うのか。含むもの・含まないものを明記。
- リスク
セキュリティ、運用負荷、導入失敗、契約条件。先に出す。
リスクを隠す提案は弱い。先に出して対策まで書くことで、顧客は安心して決められる。
3. 価格交渉 — 値引き要求への返し方 / アンカリング
値引き要求への基本
値引きされたら、価格だけ下げない。範囲を下げる。
| 顧客の発言 | 返し方 | |---|---| | もう少し安くならない?| 範囲を絞れば調整できます | | 他社は安い | 含まれる作業と運用支援の差を一緒に見ましょう | | 成果が出るかわからない | 初月は診断に絞り、次月判断にしましょう |
アンカリング
価格は単体で見せない。選択肢で見せる。
| プラン | 内容 | 目的 | |---|---|---| | Light | 診断のみ | 小さく始める | | Standard | 診断 + 実装 + 1ヶ月伴走 | 本命 | | Premium | Standard + 月次改善 + 教育 | 継続化 |
本命プランを真ん中に置く。顧客は比較で判断する。
4. 商談の流れ — 初回ヒアリング / 提案 / クロージング
初回ヒアリング
目的は売ることではなく、提案可能な課題があるかを見ること。
流れ:
- 今日の目的を確認
- 現状業務を聞く
- 困っている場面を具体化
- 代替手段と既存コストを聞く
- 決裁者・予算・期限を確認
- 次回提案の可否を合意
提案
提案は顧客の課題を言い当てるところから始める。「この人はわかっている」と思われなければ、解決策は聞かれない。
クロージング
最後に必ず次アクションを決める。持ち帰り検討で終わらせない。
- 契約する
- 条件を修正して再提案
- 決裁者と再商談
- 今回は見送り
どれでもよい。曖昧に終わるのが最悪。
5. クロージング技法 — 沈黙 / 仮クロージング / 期限設計
沈黙
価格を伝えた後、自分から話しすぎない。沈黙に耐える。相手が考える時間を奪わない。
仮クロージング
決断前に小さく確認する。
- この課題認識は合っていますか?
- この進め方なら社内で説明できそうですか?
- 価格以外で不安な点はありますか?
小さなYesを積むと、最後の決断が自然になる。
期限設計
期限は煽りではない。プロジェクト開始日、補助金締切、社内会議、月次締めなど、現実の理由に紐づける。
6. 契約書・利用規約の運用 — 雛形 + 個別カスタマイズ
営業で約束したことは契約に反映する。口頭の「できます」は危険。
商談後チェック
- 納品物は明確か
- 期間は明確か
- 顧客が用意するものは明確か
- 個人情報・機密情報の扱いは明確か
- 成果保証のように読める表現はないか
- 解約条件は明確か
顧客データやAI送信が絡む場合は、徳丸チェックを入れる。
7. 紹介報酬と成約サイクル — リファラル設計
紹介は強い。ただし、お金の扱いを曖昧にしない。
設計すること
- 紹介だけで報酬が発生するか
- 成約時だけか
- 初回入金時か
- 継続課金にも乗るか
- 顧客に紹介報酬を開示するか
最初は複雑にしない。「成約時に謝礼」程度から始める。士業・補助金・金融が絡む場合は法務確認を優先する。
8. 失注分析 — なぜ売れなかったかを言語化する
失注は失敗ではない。分析しない失注が失敗。
失注分類
| 分類 | 内容 | 次に直すもの | |---|---|---| | 課題ズレ | 相手の痛みが弱い | ターゲット / 仮説 | | 商品ズレ | 欲しい形と違う | 商品形態 / スコープ | | 価格ズレ | 価値説明と価格が合わない | 価格 / 効果提示 | | 信頼ズレ | 任せる不安が残る | 実績 / 事例 / 契約 | | タイミングズレ | 今ではない | フォロー日程 |
記録項目
` 商談日: 相手: 提案内容: 価格: 相手の反応: 失注理由: 次に直す仮説: フォロー日: `
9. 軸X(コンサル) / 軸Y(課金) それぞれへの適用
軸X
軸Xは高単価・少数商談。商談の質が売上に直結する。提案書、診断レポート、契約、セキュリティ説明を整える。
重視するもの:
- 顧客課題の言語化
- 実装までできる信頼
- 顧客データの扱い
- 月次改善の継続価値
軸Y
軸Yは低単価・多数課金。営業は1対1よりも、LP、オンボーディング、価格ページ、FAQ、解約導線が中心。
重視するもの:
- 課金前に価値が伝わるLP
- 安心できる利用規約・プライバシー
- 初回体験の速さ
- 解約理由の収集
10. 演習 — 1件の提案ロールプレイをジョブズ相手にやる
準備
以下を埋めてからロールプレイする。
` 顧客: 課題: 提案: 価格: 想定反論: クロージングの次アクション: `
ロールプレイ手順
- ジョブズに顧客役をさせる
- 初回ヒアリングを10分やる
- 提案を5分で話す
- 値引き要求・不安・保留を返してもらう
- 失注分析を書く
完了条件
- 提案の5要素が言えた
- 値引き要求に範囲調整で返せた
- 最後に次アクションを合意できた
参考資料
- [プレゼンテーションの基礎](./05-selling-presentation-basics.md) — 営業資料・提案資料の作り方
- ai-conpany
explorations/003-ai-consulting/sales/README.md— 003営業フロー - ai-conpany
projects/001-personal-brand/strategy/authority-framework.md— 権威性フレームワーク
学習目標
- 提案書の型を空で書ける
- 価格交渉で値引き圧を3パターン返せる
- クロージングで「沈黙」を意図的に使える
成功基準
- 1件の本気の提案書が完成する
- 失注理由を3分類で言える状態になる