CHAPTER 01

プレゼンテーションの基礎(2026年最新)

営業・提案で使うプレゼンの型・構成・デザイン・ストーリーテリングを5本柱で体系化

Step 5「売る」の中核能力。提案・商談・クロージングの全工程でプレゼン資料が武器になる。
このファイルは、営業提案で最低限外してはいけない型を1本にまとめた学習教材。

このファイルの位置付け

| Vault | 役割 | |---|---| | ai-conpany | 実際の営業資料を作る(explorations/003-ai-consulting/等) | | learning(ここ) | プレゼンの型を体系で学ぶ | | arscontexta | 個別事例・1次情報の保管 |

読み手: オーナー(信二さん)。腰を据えて読む座学教材。


ゴール

この教材のゴールは、きれいなスライドを作ることではない。顧客が決められる資料を作ること。営業資料は、発表中だけでなく、商談後に相手の社内・家族・経理・紹介者へ回覧される。話者がいない状態でも意味が通り、価格とリスクを説明でき、次の一歩が明確になっている必要がある。

完成条件は以下。

  • 1枚ごとに主張が1つだけ
  • 顧客の課題から始まっている
  • 価格・期間・納品物が曖昧でない
  • リスクと対策が隠されていない
  • スマホで読んでも意味が通る

5本柱の全体像

` 柱1. 黄金構成 — 5段ピラミッド(課題→目標→戦略→施策→実行) 柱2. 1スライド1メッセージ原則(脳の処理限界に合わせる) 柱3. 非同期前提設計(2026年最大の変化) 柱4. ストーリーテリング(感情→論理→決断) 柱5. デザイン基礎5鉄則(余白・階層・コントラスト・一貫性・アクセント) `


柱1. 黄金構成 — 5段ピラミッド

中小企業向け営業の鉄板構成。日本企業の意思決定者の脳に刺さる順序。

` ① 課題 なぜ今この話が必要なのか(顧客の現実を言語化) ② 目標 どこを目指すのか(到達地点の絵) ③ 戦略 どう戦うのか(アプローチ・方針) ④ 施策 何をするのか(具体メニュー) ⑤ 実行 どうやって実現するのか(スケジュール・体制・価格) `

なぜこの順序か

  • 中小オーナーは「自社の現実」を最初に見せてもらえないと聞かない
  • ③戦略から入ると「で、いくら?何してくれるの?」が見えず警戒される
  • ⑤実行で価格・スケジュール・体制を一緒に出すことで決断材料が揃う

禁則

  • いきなり③戦略から入る
  • ④施策の羅列だけで①②がない
  • ⑤実行を出さずに「持ち帰り検討」させる(=失注の温床)

そのまま使える構成

`

  • 表紙

顧客名 + 課題を1行で書く

  • 現状

いま起きている業務上の痛み

  • 放置コスト

時間・ミス・機会損失・属人化リスク

  • 目指す状態

3ヶ月後にどう変わるか

  • 解決方針

何を優先し、何をやらないか

  • 施策

実際に提供するメニュー

  • 実行計画

スケジュール・体制・顧客側作業

  • 価格

含むもの・含まないもの

  • リスクと対策

セキュリティ・運用・定着・契約

  • 次アクション

契約 / 再提案 / 決裁者同席 / 見送り `


柱2. 1スライド1メッセージ原則(CRITICAL)

ルール表

| 項目 | ルール | |---|---| | 1枚あたりの主張 | 1つだけ | | 1枚あたりの文字数 | 70文字以内 | | スライドタイトル | 「売上推移」(NG) → 「売上は前年比20%増」(OK) | | 本文フォント | 20pt以上 / 強調は32pt以上 | | 見出しフォント | 36〜48pt | | 使用色 | 3色まで(ベース2+アクセント1) | | フォント | ゴシック体(視認性) |

理由

  • 脳の処理限界。複数主張があると「何が大事か」が消える
  • シンプルな主張ほど記憶に残る
  • 商談後に資料を見返す時、タイトルだけで結論が思い出せる

練習方法

既存スライドを1枚ずつ「このスライドの主張を1文で言うと?」と自問する。 言えなければ分割するか、タイトルを書き直す。

タイトルの書き換え例

| NGタイトル | OKタイトル | |---|---| | 現状分析 | 月15時間の確認作業が社長に集中している | | AI導入案 | まず問い合わせ返信をAIで半自動化する | | 料金 | 3ヶ月で初期構築と定着支援まで含める | | スケジュール | 初月は業務棚卸し、2ヶ月目に実装、3ヶ月目に定着 |

タイトルはラベルではなく結論にする。商談後にタイトルだけ読まれても、話が伝わる状態が理想。


柱3. 非同期前提設計(2026年最大の変化)

何が変わったか

商談後、資料はメール/Slack/LINEで回し読みされる話者がいない場面で意味が通らないと失注する。

中小企業特有の事情

  • オーナーが家族・経理・取引先に資料を見せる
  • 「決裁会議」がないので回覧で意思決定する
  • スマホで読まれる(60%以上)

非同期OKなスライドの条件

  • タイトルで主張が完結(タイトルだけ読めば結論が分かる)
  • 発表者ノートに想定セリフを書く(PDF化時に注釈として埋め込む)
  • モバイル可読性(文字大きめ・コントラスト強め)
  • 1枚で完結(「次のページ参照」型を避ける)
  • 連絡先を全スライド下部に(誰の資料か即分かる)

チェック方法

作成後、スマホで開いて全スライド読む。意味が通らないスライドはNG。

非同期資料の追加ルール

  • 各スライド下部に会社名 / 連絡先 / 作成日を入れる
  • 専門語には短い補足を添える
  • 価格ページに「含まないもの」を必ず書く
  • 最終ページに「次に決めること」を3択で置く
  • PDF化してもリンク・注釈・文字が崩れないか確認する

柱4. ストーリーテリング(感情→論理→決断)

論理だけでは人は動かない。4つのテンプレを使い分ける。

テンプレA: PAS(問題→苦痛→解決)

` Problem : お客様の業務、こうなっていませんか? Agitation : このまま放置すると○○というコストが続く Solution : AIで○時間/週を取り戻せる ` 使用場面: コールドアプローチ・初回提案

テンプレB: BAB(Before→After→Bridge)

` Before : 現状はこう(顧客の今日) After : 半年後はこうなる(顧客の未来) Bridge : 私たちが架ける橋(=提供サービス) ` 使用場面: 既存顧客への追加提案・サービス拡張

テンプレC: 起承転結(共感重視・地方中小向け)

` 起 : 共通の前提(地域・業界の話) 承 : 共通の悩み(あるあるネタ) 転 : 意外な視点(AIでこう解決できる) 結 : 一緒にやりませんか ` 使用場面: 地方の中小オーナー相手・紹介経由の商談 信二さん向け推奨: 兄の店スタートなら「身近な人の現場をAIで助けた話」として語れる強み

テンプレD: 5段ピラミッド(課題→目標→戦略→施策→実行)

使用場面: 中堅以上・複数決裁者がいる場面・補助金申請

信二さん向けの使い分け

| 場面 | 使う型 | 理由 | |---|---|---| | 初回接点 | PAS | 痛みを短く確認できる | | 既存人脈への提案 | BAB | 未来像を自然に話せる | | 地方中小企業 | 起承転結 | 共感から入れる | | 補助金・複数決裁 | 5段ピラミッド | 論理と実行計画が必要 |

ストーリーは飾りではない。相手が「自分の話だ」と思う順番に並べる技術。


柱5. デザイン基礎5鉄則

| 鉄則 | 具体ルール | |---|---| | 余白を恐れない | 文字で埋めない。余白は「ここが大事」の合図 | | 視覚階層 | 大>中>小のサイズ差をはっきりつける(1.5倍以上) | | コントラスト | 背景と文字色のコントラスト比 4.5:1以上 | | 一貫性 | 全スライドで同じテンプレ・同じ位置・同じフォント | | アクセント色 | ベース2色+アクセント1色。アクセントは強調箇所のみ |

よくある失敗

  • ❌ 文字で埋め尽くす(=余白がない)
  • ❌ 1スライドに7色以上使う(=どこが大事か分からない)
  • ❌ 各スライドでレイアウトが違う(=読み手が疲れる)
  • ❌ グレー文字を白背景に置く(=コントラスト不足で読めない)

最小デザインシステム

営業資料は毎回ゼロからデザインしない。以下だけ固定する。

| 要素 | 推奨 | |---|---| | フォント | ゴシック体 | | 背景 | 白または薄いグレー | | 文字 | 黒に近い濃色 | | アクセント | 1色だけ | | 余白 | 外側広め、要素間は一定 | | 図解 | 矢印・表・2カラムまで |

「凝ったデザイン」より「読み間違えないデザイン」。営業資料では、見栄えより意思決定のしやすさを優先する。


営業資料チェックリスト

提出前に必ず確認する。

  • [ ] 1枚目が顧客の課題から始まっている
  • [ ] 自己紹介が長すぎない
  • [ ] 各スライドのタイトルが結論になっている
  • [ ] 1枚に主張が2つ以上ない
  • [ ] 価格・期間・納品物が明確
  • [ ] 含まないものが明記されている
  • [ ] セキュリティ・運用リスクが書かれている
  • [ ] 次アクションが1つに決まっている
  • [ ] スマホで読める
  • [ ] PDFで崩れていない

信二さん向け運用ルール

営業資料を作る時の社員配置(エスカレーション該当)

` 深津(戦略) : 顧客分析・ストーリー設計・構成決定 ↓ 糸井(本文) : 各スライドのコピー起案(slide-salesスキル発動) ↓ 深津(レビュー): 戦略整合性チェック・ストーリー流れ確認 ↓ ジョブズ(最終): self乖離なし / 機密情報なし / 軸の整合性チェック `

モデル切替ルール

営業資料の戦略設計段階は Opus 4.7 に切り替える(/model)。本文起案・デザイン調整はSonnet 4.6でOK。

1枚目に何を書くか

  • 顧客名 + 顧客の課題が1行(例:「○○商店様 — 月15時間の事務作業をAIで取り戻す」)
  • ❌ 「会社紹介」「自己紹介」(=顧客の関心は自分の課題)

ツール候補(2026年時点)

| ツール | 用途 | 信二さん向け評価 | |---|---|---| | Marp | Markdown→スライド変換 | ◎ 既にslide-buildスキル / slide-salesスキルあり。Git管理可 | | Gamma AI | AI自動生成 | ○ 試作・たたき台向き | | Keynote | macOS標準 | ○ 細かい調整向き | | PowerPoint | 顧客提出用 | △ 顧客がWindows前提なら(PDFで渡すなら不要) |

推奨フロー: Marp で本体を書く → PDF化して顧客提出 → 修正は Markdown 編集で即反映


参考資料

  • [Apple Human Interface Guidelines](https://developer.apple.com/design/human-interface-guidelines/) — UI一般の視認性・一貫性の参考
  • [Microsoft PowerPoint Blog](https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-365/blog/powerpoint/) — PowerPointの機能・活用情報
  • [Nielsen Norman Group](https://www.nngroup.com/articles/) — 可読性・情報設計・ユーザー理解の参考
  • slide-sales skill — 営業スライド構成をMarpで作る時に使用
  • slide-build skill — 顧客別スライド構成を作る時に使用

次の深掘り候補

各柱を深掘りする時のファイル名案:

  • 02-structure-five-pyramid.md — 5段ピラミッド構成の詳細
  • 03-one-message-rule.md — 1スライド1メッセージの実例集
  • 04-async-design.md — 非同期前提設計の詳細
  • 05-storytelling-templates.md — 4テンプレの実例集
  • 06-design-rules.md — デザイン5鉄則の実例集
  • 07-case-study-onisan.md — 兄の店事例で5段ピラミッドを使うケーススタディ
⚠️ 一気に作らない柱1〜5を読んで実際に1本資料を作ってから、足りない箇所を深掘りする。

関連リンク

  • 親: learning/sales-roadmap/05-selling.md
  • 全体: learning/OUTLINE.md
  • 実践先: ai-conpany/explorations/003-ai-consulting/
  • 営業実例集: ai-conpany 既存セッションで集めた Speaker Deck リンク群(2026-05-20)

次のアクション

  • [ ] この5本柱でOKか確認
  • [ ] OKなら柱1〜5を読んで実際に兄の店向けの営業資料を1本作る
  • [ ] 作る過程で詰まった箇所だけ深掘りファイルを追加